TAACHIでは、2022年3月15日(火)から4月30日(土) 5月8日(日)まで、シャルル・ムンカ個展「Gaps in Coverage」を開催いたします。
シャルル・ムンカは、大都市リヨンの郊外に、石工業のハンガリアン・ジプシー家系に生まれました。ムンカの苗字は、文字通りハンガリー語の「仕事」という言葉に由来しています。彼の祖先は、東欧の辺境を超えてフランスに渡り、祖国と言葉、そして受け継がれる重大な文化や歴史的遺産を置き去りにし新境地にすぐさま順応していきました。ムンカは、エミール・コール美術学校で芸術を学び始めると、すぐさまフランス高等教育が提唱する国民的伝統が自分には向いていないことを悟りました。そして20歳で東京行きの片道切符を購入し、アジアを横断する巡礼の旅を始めました。東京、上海、香港、そして再び東京に戻り、最終的に佐渡に辿り着きました。2017年以降、彼は佐渡と壱岐という、これまで訪れた場所やそれらを取り巻く全てから自らを切り離した自発的な漂流者として、彼は観客のいない単独パフォーマンスシリーズの制作に取り組み始めました。ムンカは、現実的な場の外側に存在する別の空間への直感的な憧れを抱いていたのです。
失われた時代の不透明な重なりは私たちの移動や移住に関わる進化の歴史を明確に読み取ることを困難にしています。各々の領土にいつから人々が住まうようになったのか、誰が最初に新地を開拓したのか、誰がその場所を真の故郷と呼べるのか。出発地から到着地まで明確な線を引くことはできても、既知の歴史が進むにつれて移住のパターンは認識を取り巻く政治性と植民地化の複雑さに屈してしまうのです。ムンカの作品の本質は物理的な移動と彼自身の存在の再考にあります。旧式の地図、ナビゲーションの表現、最先端のLIDAR(光を用いたリモートセンシング技術)、気象学、GPS図面を同時に使用することで、ムンカは、存在したことのない空間へと代替的に行き来する術を研究し、見出すことに取り組んでいます。
内向的な逆地図を作るように、彼は訪れた場所に何ら境界線も残しません。その代わりに、考古学的手法を思い起こさせる繊細な拓本によって既存の痕跡を写し取り、局所的な圧力をわずかに変化させることによってディテールを編集して獲得するという、直感的な蓄積のプロセスを用いるのです。これらのいわば法医学的なスケッチはひとまとめに収集され、写し取る行為を通して体感した場所の質感や、それらを執り行った際の身体的記憶はスタジオに持ち帰られ、そこで再び文脈化されてキャンバスの上に並べられるのです。
20年以上前にフランスを出発して以来、ムンカは大陸や国境を越えて、自分だけの意味を持つ「聖地」を探す旅に出ました。巡礼とコミュニティは、失われた歴史と私たち自身の存在の境界を探求するムンカの真髄と言えます。
個展
2010年 HVW8 gallery(ロサンゼルス)
2013年 McLemoi(シドニー)
2014年 Above Second(香港)
2014、2016年 Clemens Gunzer gallery(チューリッヒ)
2018年 Institut Francais du Japon(東京)
グループ展
2013年 ”Surface Tension” (Cat Street gallery、香港)
2017年 ”日仏シナジー展”(Bunkamura gallery、東京)
2017年 ”Works from the Bech Risvig collection” (Huset for kunst og design、ホルステブロ)
2020年 ”Hyper Salon vol. 2”(UART space gallery 、ソウル)
さどの島銀河芸術祭
2018年、2020年に参加
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カタログはこちらからダウンロードできます。
「Gaps in Coverage」カタログ
Charles Munka Website
https://www.charlesmunka.com/